【オペレーション改善】書店における担当制の恩恵と弊害

【オペレーション改善】書店における担当制の恩恵と弊害

あなたのお店では、売場やカテゴリを担当制で回していますか。
大多数の書店は、この担当制で店舗運営をしていると思います。果たして、この担当制に疑問を持ったことはありますか。もっといい運営方法がないか試したことはありますか。担当制のメリットだけでなく、弊害を考えたことはありますか。

私は小~中規模の書店で、担当制以外のオペレーションも試してみたことがあります。今回はその取り組み内容を紹介しつつ、担当制の良さや悪さを見つめ直してみましょう。


なぜ、ほとんどの書店は担当制を敷いているのか?


多くの書店が担当制を敷いている理由は、単純です。
「今までそうだったから」です。
ほとんどの書店の店長達は、何も疑問に思わず、過去のやり方を踏襲しているように思います。勝手に本が売れていった20年前は、それでも良かったかもしれません。今までのやり方で利益が伸びていたわけですから。しかし今では、工夫や努力をしなければ本は売れませんし、売る以外にも店舗運営をもっとコンパクトにして利益が残る構造に変えていかなければいけません。

今回は、担当制を見つめ直すことで、オペレーション構造をもう一度考え直してみるという話です。
とはいえ、ほとんどの書店が担当制を敷いているということは、そこに何かしらやり易い要素・メリットが含まれているからです。まずはそれを考えてみましょう。

担当制のメリット

売場に責任を持ってもらえる
最大のメリットは、責任の所在でしょう。担当が決まっていれば、その数字が誰の責任かがハッキリ分かります。カテゴリで売上、在庫、仕入、返品、回転率など様々な数字が出ますから、その数字の良し悪しでそのまま担当者の評価に繋げられます。また、新刊が出ていない、返品が滞っている、仕入れができていない、売れ筋が欠本している、棚がスカスカなど、数字以外の売場を見ても誰の責任かが分かります。
これは、担当者の「やる気」にも「プレッシャー」にも繋がるもので、個人の仕事として「責任感」はとても大事なものです。これが容易に与えられるのは、担当制の最大のメリットといえます。

こういったことを上手くコントロールできる店長であれば、書店の担当制のメリットは最大限活かすことができます。


担当制を敷かない方がいい理由


担当制のデメリット

よく物事は見方で良くも悪くも捉えることができて、表裏一体と言われます。
担当制のメリットは、裏を返せばデメリットにもなり得るのです。また、担当制のメリットを活かせない店長は、担当制を敷くべきではありませんし、もっといえば店長としてもっと成長すべきです。

担当者以外誰もやらない(見て見ぬ振りをする)
最大のデメリットは、担当者がいなければ、そのカテゴリは何も行われないことです。担当者がいなければ、その日入荷した新刊がその日に店頭に並ばないことがある場合は最悪です。もしそんな店舗があるのであれば、その店の店長は失格です。肩書きだけで何も店舗運営ができていません。店長自身がもっと自覚を持ちましょう。自分を変えるか、担当制をやめるかしなければいけません。売上が下がっているのは担当者のせいではなく、店長自身の責任です。
このように担当制のメリットである責任に縛られて、チームとして働いている意味をなしていない店舗を時々見かけます。

担当制は人に依存する
担当制で売上が伸びるかどうかは、担当者に依存してしまいます。優秀な担当者がいなくなれば、売上は落ちますし、優秀な担当者がいれば売上は安泰です。
当然のように思われるかもしれませんが、最初っから人に依存する仕組みの上に店舗運営をしていてはいけません。最後は人に助けられたり、スタッフの協力で成し遂げることになるのですが、それありきでオペレーションをしていると、思うような成果が上がらなかった時の理由・言い訳が人に対してになってしまいます。
まずはどんな能力の持ち主が担当者になっても、導いてあげられる能力が店長になければ、担当制は敷くべきではないでしょう。

※今回の話と少し重なるのですが、社員だけでなく、ベテランパートやベテランアルバイトに担当を持たせている書店も多いのですが、これは店長の力量が更に必要になってきます。ある書店チェーンが取り組んでいる、いいなと思う事例があるので別の機会に紹介します。


担当者をつけずにどうやって運営するか


担当者を付けずに運営する方法は2つしかありません。全員でやるか、全部自分でやるかです。

まずは担当制の場合の、担当者がやっている業務を洗い出しましょう。その中で「全員でやるもの」と「店長がやるもの or 社員がやるもの」に分けていきます。

書店における一連の流れ、入荷→品出し→販売→注文→・・・入荷→・・・の中で、何が一番売上を左右するかといえば、商品です。言い換えれば、注文です。極論を言えば、売れる商品がきちんとあれば、その商品があるべき場所に品出しされ散れば、接客なんてしなくても売上は上がりますし、売場やPOPがいまいちでも本は売れていきます。一番大切なのは、何を仕入れるか(そして何を返品するか)です。

全員で行ってもいい業務

品出しはベテランの職人みたいな担当者が行わなくていいのです。それよりも、その人がいないと売場に商品が出ないことの方が問題です。担当者がいないと売場に本がな店があれば、明日から改善する必要があります。そのため品出し全員で行ったとしても、その日に入荷した商品は当日中に出し切る方ことが大切です。場所が分からない、迷う場合は、みんなに聞けばいいのです。それで解決できます。みんなでやるチームでやるメリットは相談できる点にもあります。

品出しを行った際の何を返品すべきかに関しては、非稼動在庫、全国POSランキングなどを参考にすれば人によるズレは起こりません。この辺の指標は店ごとに店長が決めてあげれば問題ないでしょう。

全員で行わない方がいい業務

全てを全員で行うのは無理があります。特に仕入れに直結する「注文」に関しては、専任の人を設けましょう。むしろ店長や社員といった責任を取るポジションにある人、カテゴリに誰よりも詳しくお客様の反応を見て考えられる人に任せましょう。

売れ行きを予想し注文を獲得する仕入れ担当が1店舗のみならず、チェーン全体の店舗を見るなんてやり方をしている書店も多くあります。それくらい仕入れは大切な業務になってきます。


カテゴリ担当制の結論


できるだけ担当者に依存しない書店運営が理想といえます。
店長業務なら分かるのですが、アルバイトやパートの人にしか分からない、この人しかやらないということがある店は最悪です。店長のマネジメント放棄とも言っていいでしょう。やれる人にやらせておくのでは、何もしていないのと同じです。

担当制で回す方がいいのか、全員でやる方がいいのか、店長がどのような店でどんな職場にしたいかによって変わってきます。カテゴリ担当に目標や取り組み方を考えさせることで売上を作るのか、全員に共通の認識を持たせて誰でも仕事ができるようにするのか店長が決めればいいのです。私自身どちらも実践してみて、担当者がいなくても書店運営ができることは実証済みです。(出版社の営業は担当者がいないと困るかもしれませんが、、、笑)

今までこうだったからというのは一回忘れて、何か問題があるなら試して見ましょう。オペレーションを変えれば、雑給も変化しますし、売場も、売上も変わって行きます。変えたことがゴールではなく、変えたことで得たい数字が得られたかが大事です。もし得られてなければ、また変えればいいだけです。

 

私がカテゴリ制を廃止した背景には、書店の担当制による根強い問題に切り込んで見たかった裏目的・裏チャレンジもありました。
それは、新人がベテランに口出し出来ない環境が強いと感じた文化です。
新人社員がベテランパートに言えなかったり、新人店長がベテランスタッフに気を使って何も言えなかったり、書店に限らずあるあるかもしれません。別にコミュニケーション能力がある新人や、業績に対しての信念を持っている店長であれば、そんなことは起こらないと思います。しかしこうした環境で、いい業績を残せるとは思えなかったのです。書店にはこうした文化が根強くあるため、まずはカテゴリ担当を無くして、フラットな環境で学びと教え合いを創発させたかった意図がありました。

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