入学シーズンに取り組むべき書店の文具セット

入学シーズンに取り組むべき書店の文具セット

今回紹介する取り組みは、私が実際に行った仕掛けではありません。
たまたま入った地方の書店、その売場の一角で見た文具を売るための仕掛けです。「これこれ、こういうことよ!」と思いながらも、店内の一角ではなくお店を挙げて行えば沢山売れるだろうに、勿体無いと感じたことを覚えています。

余談ですが、私自身も文具の仕掛けを企画・実施ことはあります。「こういう売り方したいから協力してくれるところありますか?」と企画書を文具メーカーに出しました。何社か集まった中で最終的に絞った文具メーカー2,3社に協力してもらい、仕掛け販売を行ったこともあります。その内容などは別に紹介しますが、第1回目の実験的な意味合いや絶対売れないと反対された割には、よく売れました。ただ、この書店で見た文具の売り方は、それよりも遥かに可能性を感じる売り方だと思います。
そのため、もし文具を扱っている書店であれば、ぜひ書店で試してみて欲しいです。実際にたくさん売れるクオリティーにまで高めるには、店長や文具担当者だけの力では限界があると思うので(企画する時間があればいいのですが)、本社や他店舗の人とも協力しながら行っていって欲しいと思います。その方が、店を挙げて展開してやすいですし、交渉ごとが発生した時に有利に進められます。


文具の仕掛け販売があまり行われてない理由


先ほど、私が実施した文具の仕掛け販売は絶対売れないと反対されたと書きました。この反対は、社内や自店舗のスタッフに反対されたわけではありません。(本社はリスクさえなければ何でもやらせてもらえると思っていたので、仕入価格から返品受入まで事前に交渉済みだったので、すんなりOK出ました。スタッフは企画段階からある程度巻き込んでいたので、むしろ味方です。)

反対していたのは、文具メーカーや文具の卸会社の方でした。

そもそも前例がないという理由以外にも「文具は目的があって買いに来る商品だから、仕掛けには向かない。」という理由が多かったです。ハサミを買いに来てない人に、仕掛けたからといってハサミを売るのは難しいという理論です。

まあ理屈は通ってそうですが、実際はそんなことないと思います。本だって目的買いの本だけが売れるわけじゃないですし、文具であってもラダー設計が上手くできていれば売れるはずです。

とはいえ、こうした理由から文具業界では、仕掛け販売は行われていなかったのです。


文具のまとめ売りを仕掛ける


話は戻り、地方の書店で見つけた販売方法はこうです。

一言で表すと、文具のまとめ売りです。

入学、新学期シーズンに合わせて、書店サイドで見繕った文具をがパッケージングしてありました。それを入学祝いにいかがですか、ラッピングは無料で承ります、というものでした。書店員が選んだオリジナルのセットです。それを小学生用、中学生用と2種類の金額(2,000円セット、3,000円セット)で展開していました。

小学生用は、15点ほどのセットです。鉛筆、消しゴム、定規、コンパス、分度器など学校で使う定番の文具で組まれています。
中学生用は、10点ほどのセットです。シャーペン、消しゴム、ペンケース、ノートなど学校で使う定番の文具で組まれています。

セットの中身に関して、誰がなぜそのチョイスしたのかが分からなかったのは、もったいなかったです。例えば、「〇〇書店文具担当歴10年の〇〇が、新小学生のために選んだ消しゴムはコレ。理由は・・」とかあれば、ただの販促セットとして認識されずに済んだのかなと思います。

メーカーも、よくキャラクターでセット組みされていたり、青やピンク色で統一したセット組みで売られているものを見かけますが、あれは子ども自身が「これがいい」と言って買ってもらう感じで、今回の入学・新学期のお祝いセットとは違います。


文具のセット売りは書店員にしかできない


書店サイドがセット組をすることは、代わりに選んであげる、簡単に揃えることができる以上の価値を生みます。

メーカーは垣根を越えられないからです。

文具メーカーは他社の商品と抱き合わせで販売することはできません。そのため、セット組みをするにしても全て自社商品で行うことになります。しかし、お客様にとってのそれは、何もメリットのない話です。1社のみでセット組みする理由は、販売者側の都合です。

お客様にとっては、一番書きやすいペンだったり、使いやすい消しゴムだったり、便利なノートが欲しいのです。本来であれば、A社のルーズリーフ、B社の消しゴム、C社のシャーペンが欲しいのですが、こうしたセットは組まれることがありません。
しかしメーカーに縛られない上に、商品提供側の販売者でもある書店員は、どんな売り方もすることができます。

もちろん書店にとってもメリットはあり、セット組みすることで買い忘れのなく全て自分の店で文具を買ってもらえることにもつながります。また、書店にとっては当たり前のサービスである「ラッピングを無料」を一言添えるだけで、入学祝い、新学期祝いのプレゼントとして販売することができるのです。

このように、お客様にとっても書店にとってもメリットの多い取り組みが、入学シーズンでの文具のまとめ売りです。


文具セットの注意点


この取り組みを小手先で真似するのは簡単です。

小学生用、中学生用のそれぞれ中身の数だけ注文し、クリスタルパックなどに詰め込んで、POPを書き、ラッピング見本などを展開しておけばいいだけです。この方法で、お客様にとって、あなたの書店の信頼度が高ければ、それだけで売れるでしょう。

しかし、文具の中身(何をチョイスして入れるか)を、しっかりと考えて欲しいです。
「商品選びも販売金額に含まれる」という覚悟を持って選定してください。

小学生用の消しゴムはなぜそれなのか?本当にこっちじゃなくていいのか?購入後、買って良かった、使いやすいがそこにあるかが、お店の信頼に返ってきます。そしてそれは、普段の営業や、また別の取り組みを行った際に、売上として返ってきます。

方法論だけ真似するようでは、それなりの成果しか得ることができません。
最初に店長と文具担当だけでは時間など様々なことに限界があるから、他店や本社の協力も必要かもしれない、と書いた理由はここにあります。

ぜひあなたの書店でも入学シーズンの文具セットを企画し、販売してみてください。

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