本屋における効果的な独自フェアの仕掛け方

本屋における効果的な独自フェアの仕掛け方

売場でお店独自のフェアを企画したことがありますか?
店内の場所や期間を決めて、どの本をどれだけ展開するのか考え、その企画を実施したことがある人なら分かると思います。いかにその作業が大変なことか、、。
売場を決め、本のタイトルを決め、冊数を決め、注文し、入荷タイミングでストックし、売場作りをし、POPやパネルなども準備し、販売計測をします。

しかし、お客様にとっては本屋独自の企画、独自のフェアは、とても楽しく、興味を惹く売場コンテンツです。
知らなかった本、スルーしてしまう本と出合うきっかけになりますし、知ってる本があれば「そうそう、これこれ!」と言いたくなります。(これが出版社が用意したフェアでは、そこら中に溢れているため、面白みもなければ独自感も出ません。また選書に拘りがあるかというと、そうではありません。)
本来であれば、月に1回ペースで変化を持たせたり、隔月で企画を変えたりしながら、定期的に独自の企画を展開していくべきなのです。

とはいえ、企画・実施をするのがとても大変なことは、やったことのある人なら分かると思います。

そんな中、比較的簡単に本屋ごとの独自フェアを企画・運営していける方法がありますので、ご紹介したいと思います。ぜひ実施することで、お客様の目線や、選書の目を鍛えることができますので、いずれ大きく当てて他店にも派生するような売れる企画を生み出してください。


独自フェアを仕掛けるのは大変な仕事量


お店独自のフェアを仕掛けるにはどんなことを考え、実施なければいけないのでしょう。

・期間と目標の設定(どのくらいの期間で何冊(いくら)売るのか目標を設定します。)
・場所決め(店内のどこで仕掛けるか、どのくらいのボリュームでやるかを決めます。)
・選書(どんな本を集めるかを決め、売場に合わせて選書する本の冊数を決めます。)
・注文(品切れや希望数入るとは限りません。入荷不可の場合は、選書し直しです。)
・ストック(入荷タイミングはバラバラです、フェア用の本が売場に並ばないようにストックしておきます。)
・販促品の作成(POPやパネルなど売場でしっかりと訴求できるツールを作成します。)
・売場作り(本が揃ったら場所を空けて、売場にフェアの展開を行います。)
・撤去と入れ替え(フェアの目標値と日々の推移を比べながら結果が出ないものは、早めに次のフェアに移行しましょう。売れ続けるものはもう少し期間を引っ張りましょう。)

このように、独自フェアを仕掛けるには結構大変な労力が必要なのです。とはいえ、これを回していけることが、お店独自の特色となり、ファンを生みますし、何より売上を自らの手で作ることができるといえます。

私自身も悩んでいたことがありました。
テーブル1台でいいので、独自のフェアを月替り、隔月替わりで展開することにより、自分達で売上を作っていくにはどうすればいいか?
そして、それが短期間で終わってしまうような、しんどい取り組みではなく、継続的に続く(簡単にできて、楽しくできる)取り組みにするにはどうすればいいのか?
そんなことを、ずっと考えていた時期もありました。


独自フェアを簡単に続けられる方法


そんな独自フェアを定期的に変更しつつ、簡単に続けられる方法があります。

そもそも、一人で全部の仕事をやるのは無理があります。選書や販促ツールの作成をみんなでやればいいのです。
そして、みんなでやるには「テーマ」を設けてあげることで全てが回ることが分かりました。

つまり、テレビ番組のアメトーークのように、選書する本のテーマを括ればいいだけなのです。
アメトーークでは、「僕達は◯◯芸人です!」と言って、芸人をあるテーマに沿って括り直しながら、毎週テーマに沿った放送をしています。
これと同様のことを本でやるだけなのです。「僕達は◯◯本です!」とテーマを決めてあげるのです。
そうした後は、スタッフ全員や、各ジャンル担当に選書、販促ツール作成、本の発注までを全て任せればいいでしょう。

これはテーマ設定(括り方)さえ、グッとお客様の心を掴めれば成功したも同然です。(選書が下手過ぎるとダメですが、ほとんどの各担当者は任せられるレベルだと思います。)


選書の任せ方


お店のどこで仕掛けるか、そしてどんな売場にしたいかも大事です。
色々実践してみた中で、結局自分の店の独自色を出すには、ある程度目立つ場所で実施する必要があります。というよりも、店舗の入口付近が理想的です。お客様への印象付けとしての効果が期待できるからです。お客様の興味を引くようなテーマ設定や選書を行うことで、「この店、何か面白い本がありそう」という意識で店内を巡回してもらえるための売場にもなり得るからです。
そして、ある程度目立つ場所でやるのであれば、本のジャンルという垣根を越えて売場を作った方がいいと思います。その方が、面白みが増して立ち止まるお客様は増えます。

つまり、テーマに対して展開フェアは、全ての本が対象ということです。
「コミック」「文芸書」「文庫」「児童書」「新書」「実用書」「ムック」「ビジネス書」「学参」何でもありです。

本屋には、老若男女お客様が来店されますので、テーマに興味ある人全員にとってのキャッチーな売場ができます。


具体的な事例


そうは言われても、真面目に書店員として働いていると、頭が固くなり視野が狭くなってしまいます。ある程度、頭を柔らかくしてからテーマを決めた方が、お客様にとっても自分達にとっても面白い独自フェアになるので、どんなことができるか少し考えてみましょう。

1.美味しい本

美味しい本には、様々なアプローチができます。
実用書からは料理本、文庫や文芸書からエッセイ・小説、児童書、コミック様々なジャンルの本を一箇所に集めて、「美味しい本」というフェアを行いします。「美味しい」というテーマは、足を止める人も多くテーブル1つで月間100冊程度の販売につながりました。

2.花の本

花の本には、店内を飾る効果も出てきます。
写真集、コミック、エッセイ、小説、児童書、可愛い表紙の本が目立つことになり、店舗入口で仕掛けることにより、お店の印象がガラッと変わります。

3.赤い本

赤い本は、表紙が赤い本です。
本の括り方として、表紙の色なども面白いです。売れる売れないは、選書の力量にかかってきますが、店内をぐるっと回りながら赤い本をピックアップして並べてみたら、どんな感じになるのか分かります。試してみる価値はあると思いますよ。

このように、内容、作家、時間、色、質感など様々な括り方をして本を集めてみてください。
それをお客様に提案することで、あなたの本屋ならではの魅力を作ることができます。ネット書店でもできることですが、ふらっと寄れる本屋だからこそ、こんな本あるんだという発見に繋がるフェアになることでしょう。そしたら、そのお客様はあなたのお店のファンです。

既に全国の一部書店で行われていて、括り方で面白いなと思うのがありますので最後に紹介だけしておきます。
バースデー文庫です。
バースデー文庫は、366冊(1年366日)あるのですが、作家の誕生日で366冊本が決められています。その文庫にバースデー文庫用の同じテイストのカバーを巻いたものです。小さな棚が1本埋まる程度のボリュームになります。
これは、誕生日プレゼントなどに人気の商品となっていて、作家の誕生日で本を括るだけで、本の内容関係なく売れる本になることを証明していると思います。

ぜひ、あなたのお店でも、独自のフェアを行って、全国に波及するようなテーマ&選書の売場をつくりましょう。


フェア開発の理想


最後に、理想的なことを書かせてください。
選書って、売れる売れないに関わってくる、かなり大事な要素です。

本当であれば、この選書を店舗や会社の垣根を越えて行えたら素晴らしい売場ができるのになあと思っています。

書店員の中には、きっと本が好きで、それも特定の本のジャンルが好きで、誰よりも詳しくてって方が全国には、何十人、何百人いることでしょう。そんな人達に、「今回のテーマはこれ」と言って、得意分野の本を選書してもらえたら素晴らしい売場ができると思うんです。「その本だったら。こっちの本のがいいよね。なぜなら・・」なんてやりとりをしながら、フェアを組めたら、凄くいいフェアになるんじゃないかと思っています。それだけ、書店員は本に対するポテンシャルが高いってこと何ですけどね。

例えば、ウェブ上などでもいいです。
「こういうテーマで本を集めたい」という投稿に対して、ざっくばらんに全国の書店員の方達が「だったらこの本いいんじゃない」みたいな感じでフェアが組み上がって、実際に行ったフェアの売上データベースがたまっていき、結果の出ているフェアを別店舗にトレースしてみたり、どんどん新しいフェアが生まれたりしていけば、まだまだ本屋は自分達で売上を作って行けると思います。

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