書店の役割〔再販売価格維持制度と委託制度〕

書店の役割〔再販売価格維持制度と委託制度〕

書店員が知っておくべき出版物流通の仕組み


本の流通の仕組み 新人が超書店員になるには覚えなくてはならないのが、出版業界の仕組みです。

中でも、本の流通の仕組みや制度、それに関わる企業、そこを流れるお金などを把握しておく必要があります。
この辺の話を詳しく説明すると、ものすごく長くなります。

きちんと理解しておきたい人は、自分で調べるなり先輩に聞いて勉強してください。

今回は「書店員目線」だったら、「こういう認識をすればいい」という解説をします。

 

3部に分けて説明したいと思います。

  1. 出版業界の流通の仕組みを理解する【Part1】本が読者の手に届くまで
  2. 出版業界の流通の仕組みを理解する【Part2】書店の役割を実現する再販売価格維持制度と委託制度 ← 今回はこの説明
  3. 出版業界の流通の仕組みを理解する【Part3】お金と重要な役割

書店の役割


さて、Part1で読者の手元に本が届くようになるまでを説明しました。
全国各地に書店があるおかげで、出版社は全国の人達に本を買ってもらうことができ、読者は自分の住んでいる地域で欲しい本を手に入れることができました。

では、なぜ全国に書店があるのでしょう。

突然そんなことを言われて戸惑うかもしれませんが、これには理由があります。

「書店というのは、その地域の文化や教養の底上げを担っている」のです。書店はその地域にとって大きな役割があります。

少し考えてみてください。もし書店がなければ、どうなるでしょう。
例えば、日本人の宇宙飛行士のニュースを見た田舎に住んでる少年が、僕も宇宙飛行士になりたい!と憧れを持ち、夢を思い描いたとしましょう。
少年はどうすれば宇宙飛行になれるのか、宇宙飛行士とはどういう仕事なのか、宇宙はどうなっているのか知りたくなるでしょう。

その疑問を親に聞きます、その疑問を先生に聞きます。しかし、宇宙飛行士の仕事や宇宙飛行士のなり方なんて知ってる人は少ないのではないでしょうか。
せっかく日本の若者が大きな志を持ったのにも関わらず、その夢は叶えようがありません。
それどころか、その少年はもしかしたらすごい才能を持っていて、導いてあげることさえできれば、宇宙飛行士になれたり、宇宙に関する大きな発見などをするかもしれません。
その芽を摘んでしまうことは、日本にとっても大きな損失です。

しかし、日本にはどの地域に行っても書店があります。
書店には当然、宇宙の本が並んでいます。伝記や宇宙飛行士が書いたエッセイもあるかもしれません。
その少年は、本から学ぶことができるのです。

今回は、例えで宇宙飛行士の話をしましたが、それが音楽(楽器)だってそうですし、医療だってそうです。地域の文化や教養は、書店が支えているのです。


書店に置いている本


本当に地域文化や教養の底上げを担う役割を果たしているのです。
それは、書店にはあらゆる本が並んでいるからです。きっと宇宙の本も、どの書店にもあるはずです。

だからといって、「宇宙に関する本が毎日売れると思いますか?」

一般的に小売店というのは限られたスペースに在庫を持つため、より売れ筋の商品を多く置き、売れない商品は店頭に置かないようにします。それが正しい在り方でもあります。

しかし書店にはありとあらゆるジャンルの本が並んでいます。本当であれば、売れる本だけ置いておけばリスクも少なく効率が良くなるはずです。ベストセラーだけでもいいのです。雑誌とコミックだけだっていいのです。(コンビニは効率を考えて雑誌とコミックだけです。)

それをしないのは、なぜでしょう。
それは、書店には役割があるからですね。
そして、その役割を実現するために出版業界特有の2つの制度があります。

それが、再販制度(再販売価格維持制度)委託制度です。


再販制度(再販売価格維持制度)


本の普及を支える制度の一つが、再販制度(再販売価格維持制度)です。
この制度を簡単に言えば、出版社が決めた価格を書店に守ってもらい、本を定価で売る制度です。

本来であれば、このような仕組みは独占禁止法によって禁止されていますが、本は文化や教養を普及するものと見なされているため独占禁止法から適用場外されて、再販制度が認められているのです。

本の値引きをしている書店を見かけないのは、この制度があるからですね。

定価で販売することにより、書店や出版社による価格競争が行われなくなります。もし再販制度がなければ、体力のない地方の書店は潰れ、本に触れる機会に対して地域格差ができてしまいます。また売れる本だけが作られ、多種多様な本が生まれることはなくなってしまいます。

これまで、再販制度について様々な議論がされてきました。出版業界の中でも読者と直接触れ合う書店員として、再販制度をどう考えるかは、大切なことだと思いますので、書店員の皆さんも一度考えてみてください。
日本にとって、出版業界にとって、読者にとって、出版社にとって、取次にとって、著者にとって、そして書店にとって、再販制度はどうあるべきでしょうか。


委託制度


もう一つ書店の役割である地域の教養や文化の底上げを支えている制度がある、それが委託制度です。
委託制度とは、出版社・取次・書店の三者で契約されているもので、決められた期間内であれば、売れ残った本は返品できるという制度です。
新しい号が出た雑誌は返品でき、売れずにずっと棚に入っている本も返品ができるのはこのためです。

宇宙の本が置けるのはこの制度のおかげといっていいでしょう。委託制度があるため、書店は売れなさそうな本も店頭に置くことができます。また、本が書店に置かれることにより、手にとってもらえる機会が増え、色々な本が売れる可能性も高くなります。

返品できるからこそ、新刊や重版は配本であり、ベストセラー以外の多種多様な本も仕入れることができるのです。

 

再販制度による価格の安定と、委託制度による並ぶ本の豊富さによって、書店はその役割を果たすことができると言えます。
宇宙の本、ギターの本、肩こりの本、経済の本、釣りの本、旅行の本、ファッションの本、歴史の本 etc、あらゆるジャンルの本があることが書店には求められています。

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